透明オレンジ色の万年筆なんて買うヤツはいない.そんな風に考えていた時期が俺にもありました.
このところの文具散財の最後を飾るべく当方の手許にやってきた万年筆,PILOT Custum Heritage 92.なんといっても強烈な透明オレンジが身上です.今は手許にあったパイロット・色彩雫の「紅葉」を入れております.
今回の万年筆は赤インク用に探しました.近年は添削というと文章だけでなくパワーポイントプレゼンテーションもよく対象になるので,図や大きな文字に負けないクッキリした太字を書ける赤ペンを欲していたのです.
これまではLAMYのBニブを使っておりましたが,いかにもペン先が硬いのです.正しい角度で適切な紙に当てたときの太い線は素晴らしいのですが,スウィートスポットから外れると途端にかすれたり引っかかりを感じたり.要するところ,当方との相性がイマイチだったのです.
そういうわけで,国産ブランド万年筆のBニブを探すことにしました.LAMYのBと同等の太さとなると,国産ブランドではBBが近いとは思うのですが,少し細目を試してみることにしたのです.
そしてもう1つ,インク残量が見えることを条件にしました.太字で書くとインクの減りが早いですから.しかし日本メーカーの万年筆はLAMYにあるような「のぞき穴」がお好みではないようなので,いわゆる「透明軸」で探しました.
さて,似た者(キワモノ?)仲間のPelikan M205DUOと並べてみると,カスタムヘリテイジ92のほうがかなり長いですが,雰囲気は案外似ています.お尻のところが,ペリカンは本体と同色なのにパイロットはスモークグレーなんですよね.メーカーWebを見ているときは気になりませんでしたが,並べてみるとちょっと残念.ここもオレンジにしてほしかった.
ニブは14Kではありますが,ロジウム仕上げで銀色です.クリップもシンプルな形なので,気取ることなく使えそう.鉄ペンばかり使っている当方は多少柔らかいタッチを期待していたのですが,太字(B)ということもあってか,かなりガッシリした書き味です.
LAMYのB, Pelikan BB(ハイライター), そしてPilot Bで線を引いて比べてみました.やはり海外メーカーのBよりは細いですが,予想よりもしっかり太い線が書けます.これから赤入れに活躍してもらう予定です.
オレンジ色に行きつくまで
いざ探してみると,日本メーカーで太字をラインナップするシリーズは意外と少数です.透明軸,という条件まで加えると,次表ぐらいしか見つけられませんでした.
メーカー | 製品名 | 透明軸 | ニブ | 税別価格 | Amazon参考 |
---|---|---|---|---|---|
プラチナ | #3776センチュリー | △ | 14K | 10,000 | 6,499 |
パイロット | カスタムヘリテイジ92 | ○ | 14K | 15,000 | 10,500 |
セーラー | プロフェッショナルギア・スリム | ○ | 14K | - | 12,000 |
プラチナ | #3776センチュリーニース | ○ | 14K | 20,000 | 14,550 |
パイロット | カスタム823 | △ | 14K | 30,000 | 21,051 |
セーラー | プロフェッショナルギア銀 | ○ | 21K | 60,000 | 49,372 |
今回の条件を満たす最も安価な製品は,プラチナの3776センチュリーとなりそうです.赤インクを入れるとなればボルドー軸ですね.コンバーターを入れても7,000円前後で買えそうです.逆に言うと,鉄ペンのように3,000円以下で選び放題,というのは無理ですね.
しかしながら,どうにも保守的なデザインですよね,3776.そこが良い,という方も多いとは思うのですが,これまで鉄ペンばかり買ってきた身からすると,せっかく価格帯を上げるならもう少しこうグッとくるヤツは無いかな,などと欲がでます.
同じ3776センチュリーでも「ニース」と名付けられたもの,透明軸にピンクゴールドの金具を備えた製品がまた魅力的なんですよね・・・値段は倍になってしまいますが.
その次に安価なヤツを探すと,もう1万円を超えてしまいますがパイロットのカスタムヘリテイジ92があがってきます.これはラインナップ全色が透明系で,無色はもちろんスモーキーな黒,青,そしてオレンジがあります.
当方も最初にこの製品を知ったとき「オレンジは無いよな」と思いましたよ.ボルドーでもコハクでもなく鮮やかなオレンジ.定価15,000円の金ペンで透明オレンジ.常識的には無色か黒でしょう.
しかし,なぜか印象に強く残ったんですよね・・・オレンジ.
これまで使ってきたLAMYは透明軸で,赤インクを入れれば赤い(印象の)ペンになります.ただ,細いコンバーターに収まったインクがそんなに綺麗に見えるかというとそうでもないし,ラフに使っているとキャップに赤インクが付着したり.「面白い」けど「美しい」わけでもないんです.
そう考えると,(赤インクを入れるので)暖色系の色が付いているほうがいいんじゃないか,そんな風に思いなおしました.尤も,そこから常識的に導き出される結論は,価格面でも汚れの目立たなさを考えても「プラチナ 3776 センチュリー ボルドー」でしょう.そう分かっているのに,何故か忘れられないんですよ,オレンジ.
結局,しばし逡巡した後,オレンジにしました.
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